最近、全壊・全焼建物数が80~90万棟、経済損失が110兆円強とも予想される、首都直下型地震が今後30年以内に70%の確率で起こる、という説がクローズアップされ、専門家の間でも話題となっています。
先日、災害とは地震だけのことを指すのではない、という趣旨の話をいたしましたが、やはり中野区に住む私たちにとって、大地震対策は早急に取り組まなければならない課題と言えます。
実は、阪神・淡路大震災の被害分析結果から以下のようなことがわかっています。
・犠牲者の約92%(直接の死因や死亡時刻が推定できないケースを除くと約96%)が地震直後の5~10分以内に、つまりほぼ一瞬にして亡くなっている。
・犠牲者の死亡原因は窒息死や圧死という、家屋の倒壊や家具の転倒によるものが83,3%を占めており、次に多くを占める、火災による犠牲者も実際には、倒壊した建物や家具の下敷きになり、逃げ出せずに焼死してしまったケースがほとんどだった。
つまり、この数字は、地震発生後、どんなに政府が迅速に動いていようが、自衛隊が自主的に出動していようが、犠牲者を減らすことはほぼ不可能に近かった、という厳しい現実を証明していると言えます。
また、最近その名を知られるようになった、「救助犬」
これも、過去の災害史を振り返ってみると、大体2万人以上の犠牲者が出た大地震で1名の生存者を発見できる、くらいの状況なのだそうです。
つまり地震に関しては、学校などの公共施設はもちろんですが、住宅やオフィスの「耐震性」を高めることが非常に重要だということがわかります。(早朝発生した兵庫県南部地震では自宅での死亡率が86,6%だった)
しかし、いくら耐震性を高めるというのが大切だとわかっていても、耐震改修工事には一戸建てでも100万円単位の費用がかかります。中野区でも無料の耐震診断制度や補助金制度などを設けて耐震化の促進を図ろうとしていますが、
→ http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/015/d13100062.html
→ http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/015/d13100084.html
なかなかスムーズには進まない、というのが現状です。
防災士講座では、東京大学生産技術研究所の目黒公郎先生が、耐震化促進のためには自主的に耐震改修を実施する人がもっとメリットを感じられるような制度への抜本的改革が必要だとおっしゃっていました。目黒先生の防災に対する見解や提案は非常に斬新かつ合理的で、国民一人当たりの負担が最小限で最大の効果を生む地震ファンドや新しいタイプの地震保険のアイディアは、大変興味深く勉強になりました。
が、それらはすべて首都直下型地震が近いうちに必ず起こるという前提で考案されているものなんですね。現実を直視し、しっかり対策立てて実行しなきゃな、という気持ちと、大地震が本当にやってくるなんてやっぱり信じたくない、という気持ちが入り混じって正直、何とも言えない気分になりました。
地震対策に建物の耐震改修が重要な理由
2009年1月28日