先月の区議会第三回定例会での区長答弁、そして、その後開かれた区長の記者会見を受けて、中野サンプラザ解体・建て替えがあたかも決定したかのようなニュースが各メディアで報道されました。しかしこれは区長が方針を示しただけで、その後にどのような施設ができるのかも含め、まだ正式に何かが決定したということではありません。
サンプラザ再整備のニュースが流れたのち、区内外の方々からサンプラザがなくなることを惜しむ声をいただき、改めて皆さまのサンプラザへの愛着を強く実感いたしました。また、サンプラザの築き上げてきたブランド価値が新しい建物に引き継がれるか、その建物がどのようなものになるのかも全く不透明な今の状況で、このまま計画を進めてしまって本当によいのだろうか、と疑問に感じております。
建築関係の専門家に話を聞くと、内部の設備の更新やバリアフリー化は必要だが、建物(躯体)自体はしっかりしていて100年以上もつということです。三角形のサンプラザは容積が少なく経済合理性を考えるともっと別の形に建て替えた方が良いのかもしれませんが、中野だけでなく日本全国探してもあのような建物は他になく、一旦解体されたら同じ形のビルはもう二度と生まれてこないでしょう。あの色や形だったからこそ、サンプラザは全国的に知名度のある中野区のシンボルとして長年にわたり不動の地位を確立してきたところも大きいと思います。また中野区にはサンプラザ以外、残念ながら全国的に有名な地域資源はありません。どのようなかたちに建て替えられるのか、区は検討中とのことですが、綺麗なだけで何の特徴もないどこにでもある建物ができてしまうとすれば非常に勿体無いことです。
区はサンプラザ建て替えの理由の一つとして、施設の老朽化を掲げており、15年長寿命化すると32億のお金がかかり経営も黒字化できないと言いますが、これは今の古い設備を最低限更新するための費用であり、もしも内部を全面リニューアル、あるいはリノベーションした場合、当初は経費がかかりますが、この更新費用はなくなり、経営も黒字化できる可能性も十分あると思います。それによくよく考えてみれば、リノベーションより建て替えの方が多額の費用がかかるのは明らかです。
そもそもサンプラザの寿命は60年であると根拠なく設定し、あと15年しかもたない、という印象を与えるのも問題であり、長寿命化のための補修経費も本来は躯体の状況を調査し、長期修繕計画を作る中で初めて出てくるものであり、実際に工事の見積もりをする場合には区が用いたような、一平米あたりの平均単価×面積といった計算式は使わないはずです。
例えば区立小中学校は相当老朽化しているところでも、お金がないという理由で設備はぼろぼろ、建て替えを先延ばししてだましだまし使い続けているところがあるのに、サンプラザに関してはまだまだ使えるのにとにかく壊して建て直そうとする、開発最優先で事業が進められていると感じます。
区長は6月の選挙戦の際に一万人アリーナを見直すとはいったけれどサンプラザを存続させるとは公約として掲げていない、と説明されています。しかし前区長が「サンプラザ解体を進める」と明言していたこと、街頭演説などの内容から、新区長にはそれをストップすることを期待して投票された区民の方々も少なくなかったようです。
新区長は就任直後に何故か?サンプラザ解体見直しを宣言され、数ヶ月検証したのちに結局、前区長の方針通り建て替えることになったわけですが、その検証自体も第三者機関が入ったわけでもなく、これまで計画を推進してきた部署内のみで内輪で行ったものです。老朽化の他の理由としては解体が中野駅に新しくできる西側橋上駅舎建設の前提条件となっているため、また区役所新庁舎の建設資金を捻出するため、ユニバーサルデザインの街づくりなどあげていますが、これらは検証するまでもなく最初から分かっていたことばかりです。例えば議会でも昨年12月に西側の新駅舎建設の実施設計をスタートするという報告がありましたが、その時には、都市計画変更を前提としているが、サンプラザ解体を前提としている、といった説明はなされませんでした。明確な説明もなく裏で既成事実を積み上げて後出しジャンケンのように、実施設計も始まっているし、今更サンプラザは残せない、などというのは誠意ある対応とはいえないのではないでしょうか。平和の森公園の再整備や哲学堂公園の学習展示施設建設は、実施設計が終了しているのにも関わらず、新区長は設計のみならず事業計画自体を変更しようとしています。駅舎の方だけ今更設計変更ができない、と主張するなら、解体見直しのための検証など意味がないですし、最初からするべきではありません。また、区役所を新しく建て替えるためのお金を得るためにサンプラザを解体して土地を手放すことも辞さない、ということをきちんと説明したら区民の皆さまは本当に納得するのでしょうか。
長くなりましたので続きはまた次回に。